読書

『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』の感想を書いてくよ!

はじめに

みなさん、こんにちは。

みなさんは中日ドラゴンズの監督で一番有名なのは誰? と聞かれたら誰と答えますか。

この辺りは世代の違いもあると思いますが、やはり日本一になった落合監督を挙げる人が多いかもしれません。

今日は落合監督が中日ドラゴンズで指揮を執った8年間にスポットを当てた本を紹介します。

今回紹介するのは、中日ドラゴンズ元監督・落合博満氏の言葉と指導術を追ったノンフィクション『嫌われた監督』(著:鈴木忠平)です。この本はスポーツノンフィクションの傑作とも評される一冊です。

この本をオススメしたい人

  • プロ野球が好き、興味のある人
  • 組織をマネジメント、監督する人
  • 目指すべきリーダー像に迷っている人
  • 仕事に対するモチベーションが下がっている人

分かったこと、学んだこと

  • 心が揺らぐのは技術が足りないから
  • 毎日観察し、数字では表れない部分にも注目する
  • コミュニケーションは必要以上に取ったほうがいい

あらすじ

なぜ語らないのか。 なぜいつも独りなのか。 そしてなぜ嫌われるのか。 謎めいた沈黙と非情な采配に翻弄された男たちの証言から、孤高にして異端の名将の実像に迫る。組織における人材登用術、リーダ一の覚悟などビジネスパーソンにも影響を与えた傑作ノンフィクション。

引用:嫌われた監督 ウラスジ

この本は12人の選手やドラフト関係者など落合監督の近くにいたそれぞれの人物の視点から語られる作品です。

また作者は落合監督就任から退任までの8年間中日ドラゴンズを取材した新聞記者なだけあって、当時のセリーグないし日本のプロ野球を席巻したオレ流の考え方を覗くことができますよ。

特に印象に残った場面

「ここから毎日バッターを見ててみな」

最初に印象に残ったシーンは著者である新聞記者に対し、落合監督が言った言葉です。

ナゴヤドームではゲージの中に順番に打者が入りバッティングピッチャーの投げるボールをもくもくと打っていました。

その様子を見ていた著者である新聞記者のもとに就任2年目の落合監督がやってきます。

記者に向かって落合監督は言いました。

「ここから毎日バッターを見ててみな。同じ場所から、同じ人間を見るんだ。
それを毎日続けてはじめて、昨日と今日、そのバッターがどう違うのか、わかるはずだ。
そうしたら、俺に話なんか訊かなくても記事が書けるじゃねえか」

引用:78ページ

このシーンはこの本の中でも一番のポイントになると思います。

打率やら得点圏打率やOPS、エラー数や防御率など様々な数字で選手の成績を比べることができる昨今。

落合監督は数字では見えてこない「選手の日々のちょっとした変化」に敏感でした。

毎日毎日、定点観測をし、去年出来ていたことができなくなった、もしくは去年できなかったことが今年はできなくなったというのを数字はもちろん、定点観測によって測っていたのです。

この考え方は、落合監督の選手を選ぶ一つの大切な基準になっていることが、この本を読むうちに分かってきました。

「競争させねえ」

FAで西武から移籍してきた和田選手に対する落合監督の考え方がビックリしたので紹介します。

この世界ではいつだって、若くて新しいスターが待ち望まれている。だから地元放送局のインタビューには、「競争して、ポジションを勝ち取りたいです」と答えていた。事実、その覚悟だった。
だが、落合はそんな和田の引け目を「お前は競争させねえ」という一言で吹き飛ばし
た。メディアの前でもそう公言した。
「この世界は実力社会だ。年齢は関係ない―――」
パ・リーグで首位打者の実績がある和田に対し、何も証明していない若手選手には競
争する権利すらないというのだ。

引用:320ページ

当時、35歳でFA宣言し中日ドラゴンズにやってきた和田選手ですが、プロ野球において35歳という年齢はベテランの域に突入しています。

そうなると、どうしてもフレッシュな若手を使うべきだ、という声が出てきます。

落合監督はそんな考えに対し、大切なのは年齢とかそういうことではなく、実力だということをハッキリさせました。

未来の球団のことを考えれば、あと数年で引退するであろうベテランより若手を使うべきという考えも分かりますが、落合監督は今シーズンをどのように戦うかに重点を置いていました。

この本では当時のスカウト部長の章もありますが、未来よりも今、今シーズンをどのように戦うかに重点を置いたドラフト戦略ということがよく分かりました。

そのおかげで中日ドラゴンズの黄金期が来たのかもしれませんね。

ただし、落合監督退任から10年以上経っていますが、世代交代が上手くいっているとはとても言えないのが残念ですね。

「心は技術で補える」

なぜ、自分はこれほど不安に苛まれるのか。なぜ、もっと揺るぎない心を持って生ま
れてこなかったのか。プロ十六年目になっても自己不信の根っこが消えることはなかっ
そんな荒木に落合は言い放った。
「心は技術で補える。心が弱いのは、技術が足りないからだ」
落合が求めたのは日によって浮き沈みする感情的なプレーではなく、闘志や気迫とい
う曖昧なものでもなく、いつどんな状況でも揺るがない技術だった。

引用:439ページ

これはプロ野球選手以外の社会人にも刺さると思います。

仕事の技術が頭一つ抜けていれば不安になる必要はないということですね。

ちょっとドライな印象を受ける人もいかもしれません。

心技体という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。

つまりは技があれば心も揺るがない。心が揺るがなければ技も揺るがないというお互いを支えあうものなんですかね。

自信をつけるには練習をしろ、ということなんでしょうか。

僕は「心は技術で補える」という言い回しから技術が高ければ多少心が揺らいでも勝手に体が動いてくれるという意味なのかな、と思いました。

「勝たせるのは俺。責任は自分の給料に取れ」

就任以来、落合が選手に禁じていたことがあった。ヘッドスライディングだ。とりわ
け本塁へのヘッドスライディングは故障のリスクが高いため、固く禁止されていた。
「どんなことがあっても頭から飛び込むな。レギュラーっていうのはな、一年間すべて
の試合に出なくちゃならないんだ。もし飛び込んで怪我したら、お前責任取れるか?
勝敗の責任は俺が取る。お前たちは、自分の給料の責任を取るんだ」
どの監督からも愛された荒木のヘッドスライディングを、落合は禁じた。

引用:440ページ

とてもカッコイイ言葉ですね。ただ個人事業主のプロ野球選手からするとプレッシャーを感じる言葉かもしれませんね。

体が資本ということですね。まずはケガをしない。ケガをしないためにはケガをするリスクを極力避けるということです。

ヘッドスライディングはチームの士気が上がるプレーの一つです。さっきの引用部分でもありましたが、闘志や気迫ではなく技術で裏付けされたプレーをしろということです。

闘志や気迫任せにするとケガをする。ケガをすると個人事業主としては致命的です。

選手を闘志や気迫でプレーをするなということは、実は選手を守るための考え方なのかもしれませんね。

「好き嫌いで使ってるわけじゃない」

ある夜、荒木はずっと抱えてきた疑問をぶつけてみた。
「使う選手と使わない選手をどこで測っているんですか?」
落合の物差しが知りたかった。
すると、指揮官はじろりと荒木を見て、言った。
「心配するな。俺はお前が好きだから試合に使っているわけじゃない。俺は好き嫌いで
選手を見ていない」
荒木は一瞬、その言葉をどう解釈するべきか迷ったが、最終的には褒め言葉なのだろ
うと受け止めた。
「でもな……この世界、そうじゃない人間の方が多いんだ」
落合は少し笑ってグラスを置くと、荒木の眼を見た。
「だからお前は、監督から嫌われても、使わざるを得ないような選手になれよ――」
その言葉はずっと荒木の胸から消えなかった。
笑いでいるのは、勝利とそのための技術のみだった。

引用:448ページ

これも社会人に刺さる人が多いのではないのでしょうか。

能力うんぬんより好き嫌いで選ばれることはけっこうあるあるではないですか?

職場で、「この人おらんと困るな」という人は案外少ないように思います。そうなると、どうしても好き嫌いの感情面が出てきてしまいます。

だからこそ、その場で自分が必要とされる、「圧倒的な技術」を持っておく必要があるということですね。

見えない数字を信じる力

 

住居らしき建物と田園風景が描かれた水彩画だった。
「俺は選手の動きを一枚の絵にするんだ。毎日、同じ場所から眺めていると頭や手や足
が最初にあったところからズレていることがある。そうしたら、その選手の動きはおか
しいってことなんだ」
絵画の中の建物や花々を見つめながら、落合は言った。
「どんな選手だって年数を重ねれば、だんだんとズレてくる。人間っていうのはそうい
うもんだ。ただ荒木だけは、あいつの足の動きだけは、八年間ほとんど変わらなかっ
た」
私は言葉を失っていた。
増え続ける失策数と、蒼白になっていく荒木の表情と、そうした目に見える情報から、
なぜ落合は右肩に痛みを抱える選手をショートへコンバートしたのか? なぜ、あえて
地獄に突き落としたのか?私は怒りにも似た疑問を抱いていた。
だが落合が見ていたのはボールを捕った後ではなく、その前だった。前年の二十失策
と今年の十六失策の裏で、これまでなら外野へ抜けていったはずの打球を荒木が何本阻
止したか……。記録には記されず、それゆえ目に見えないはずのその数字が落合には見えていたのだ。失策数の増加に反して、チームが優勝するという謎の答えがそこにあった。
つまり落合が見抜いたのは、 井端弘和の足の衰えだったのだ。

引用:466ページ

最初の記者に言った、「ここから毎日バッターを見ててみな。同じ場所から、同じ人間を見るんだ。それを毎日続けてはじめて、昨日と今日、そのバッターがどう違うのか、わかるはずだ」という言葉の意味が分かったと思います。

この毎日観測ってけっこう続けるの大変だと思います。僕もけっこう変化に敏感でないといけない仕事なので毎日同じ場所から観察というのは参考になりました。

感想

当時、中日ドラゴンズが落合政権のころは僕はまだ小学生、中学生くらいの子供の頃でしたが、とにかく強いという印象がありました。

ピッチャー、バッター役者ぞろいだった中日ドラゴンズがどうやってずっとAクラスにいることができなのか、その答えがちょっとだけ見えた気がしました。

組織が日々強くあるためには、競争と目的を達成するための手段、目的を達成する執念だということが分かりました。

落合監督は感情を極力排し、数字だけでは見えてこない第六感も大切にしていることが分かりました。

ただし、この本を読んで思ったことはコミュニケーションは大切だということです。

どんなに結果を出しても、必要以上に意識してコミュニケーションを取らないとダメなんだな、と。

まとめ

今日は最近読んだ面白かった本を紹介しました。

この本をオススメしたい人

  • プロ野球が好き、興味のある人
  • 組織をマネジメント、監督する人
  • 目指すべきリーダー像に迷っている人
  • 仕事に対するモチベーションが下がっている人

けっこう分厚く、読むのに時間はかかりますが、読み応えたっぷりの本でした。中日ドラゴンズの裏側も詳しく描かれていて、「へーこんな風になっているんだ」と感動しました。

落合監督の考え方がよく分かる面白い本でした。ぜひ読んでみてください。

それではノシ!

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